SNSにセミのことを書くときに思わず「セミの変態」という言葉を使っていた。
セミは、不完全変態昆虫であり、蛹を経る「完全変態」はしないが、幼虫期と成虫機は食性を含む生態が大きく変わるため、ボディプランも変化する。
蛹を経ることのみを単に「変態」と言うことも多いが、セミやトンボに見られるようあ成虫脱皮も、(広義には)「変態」と言ってもいいでしょう。
海の動物にも関わるように(5年前から)なりましたが、ウニの変態などは脱皮や蛹期を介するものではないし、ナマコの幼生からの変態はウニほど劇的な変化ではないが、変態と呼んでいます。
環形動物のトロコフォア幼生も変態と呼ばれていますが、これもそれほど大きな変化ではない。プランクトニックなフェイズからの着底が行われることが多い。その意味でも、変態は、形態だけの問題ではなく、生活様式が変化するということも重要なのでしょう。
その意味でセミの成虫脱皮を「変態」と呼んでも問題無いように思います。
ついに!シロアリ兵隊の大顎を伸ばす遺伝子を同定した論文が Development 誌に掲載されました。北大時代のS君の仕事が中心ですが、現・院生のO君がリバイス時の追加実験を頑張ってくれ、なんとか受理・掲載にまでたどり着きました。
思えば約20年前に始めたシロアリのカースト分化のエボデボ研究。当時からやりたかったのはこういう仕事だったように思います。学生の頃からの憧れのジャーナルに載せて頂き、感無量です。
Termite soldier mandibles are elongated by dachshund under hormonal and Hox gene controls
しかも、リサーチハイライト(注目の研究)として別途記事に取り上げて頂きました。
dachshund allows termite mandibles to soldier on
プレスリリース資料(日本語解説)はこちら。
兵隊シロアリの大顎を伸ばすダックスフンド遺伝子:環境要因と形態形成を繋ぐ
昆虫と甲殻類を合わせて汎甲殻類と言いますが、それらの間では共通した内分泌機構が表現型可塑性の調節に関わっています。とくに幼若ホルモンが重要な働きをすることは古くから知られておりましたが、最近では様々な分子生物学的手法により、その分子機構が色々と明らかにされてきました。
北大時代から書いていた総説論文でしたが、ようやく日の目を見るときが来ました。
Miura T (2018) Dev Growth Differ
Juvenile hormone as a physiological regulator mediating phenotypic plasticity in pancrustaceans.
https://doi.org/10.1111/dgd.12572
下記の通り、第288回 三崎談話会を開催いたします。今回はウミユリ類の発生をご研究されている大森先生にご講演をお願いしました。
参加申込・お問い合わせは、三浦(miu_at_mmbs.s.u-tokyo.ac.jp)または小口(世話人 k.ohgreen226_at_gmail.com)まで。
日時:2018年10月19日(金)17時00分〜
場所:東京大学大学院理学系研究科・附属臨海実験所・セミナー室
講演者:大森紹仁(新潟大学理学部附属臨海実験所・助教)
懇親会: 18時30分〜
【講演要旨】
棘皮動物は一般的に幼生では左右相称、成体では五放射相称の体制を示す。発生の過程で体軸が大きく変わるため、そのパターン形成の仕組み、および幼生、成体それぞれの体制と他の新口動物の体制との進化的関連性を明らかにすることは、新口動物における体軸の進化を考察する上で重要な課題の一つである。ウミユリ類(有柄ウミユリ、ウミシダ)は現生棘皮動物の中で最も祖先的な体制を残すが、その飼育・発生の難しさから、進化発生学的な研究は近年まであまり行われてこなかった。本講演では、ウミユリ類の飼育・発生の現状について紹介するとともに、多くの動物で体軸に沿ったパターン形成に関わる遺伝子群のウミユリ類発生過程における解析結果を報告する。