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シロアリの3種の網羅的遺伝子カタログの作成に成功

最近発表された我々の仕事がプレスリリースされました.

北海道大学プレスリリース (pdf)

基礎生物学研究所ニュース 研究報告

 
北大のHPだとpdfからしか見れないので,こちらにも貼っておきます.

シロアリの3種の網羅的遺伝子カタログの作成に成功


【研究成果のポイント】
 
 ・日本に生息するシロアリ3 種の遺伝子塩基配列を網羅的に解読した。
 
 ・それらの塩基配列情報の解析で,未知遺伝子を数多く発見した。
 
 ・多くのシロアリ遺伝子にDNA メチル化が生じていることを示唆するデータが得られた。
 
 ・本研究で得られた大規模な遺伝子配列情報は,シロアリの遺伝学,進化学,生態学などの基礎研究だけでなく,シロアリ防除などの応用研究にも役立つことが期待される。
 
【研究成果の概要】

シロアリは,甚大な被害を与える家屋害虫として,また生物学的に興味深い特徴を数多く有する昆虫として,とても大きな存在感を持つ生物ですが,これまでシロアリがどのような遺伝子を持っているかはほとんど明らかになっていませんでした。

本研究では,次世代DNA シーケンサー(大規模塩基配列解読装置)と呼ばれる新技術を用いて,オオシロアリ,ヤマトシロアリ,タカサゴシロアリで発現している遺伝子の塩基配列を網羅的に解読することに成功しました。得られた塩基配列情報を大型計算機を用いて解析すると,未知遺伝子が数多く発見されました。

また,3種のシロアリがDNA メチル化(注)に必須な遺伝子を持ち,多くの遺伝子がDNA メチル化の特徴を示すことが明らかになりました。

本研究で得られた遺伝子塩基配列情報は,様々な基礎研究や応用研究の発展に貢献することが期待されます。

(注) DNA の塩基に付加される化学修飾で,遺伝子活性(遺伝子発現量)調節の目印と考えられている。



【論文発表の概要】


 

研究論文名

Construction and characterization of normalized cDNA libraries by 454 pyrosequencing and estimation of DNA methylation levels in three distantly related termite species


(遠縁な3種のシロアリにおける454 パイロシーケンシングによる均一化cDNA ライブラリの構築・特徴とDNA メチル化レベルの推定)



著者

林 良信(北海道大学,シドニー大学)
重信秀治(基礎生物学研究所)
渡邊 大(北海道大学,富山大学)
栂 浩平(富山大学,名古屋大学)
斉木亮太(富山大学)
嶋田敬介(富山大学,石川県立自然史資料館)
Thomas Bourguignon(北海道大学,シンガポール大学)
Nathan Lo(シドニー大学)
北條 優(琉球大学)
前川清人(富山大学)
三浦 徹(北海道大学)


 

公表雑誌

PLoS ONE


 

公表日

米国東部時間2013 年9 月30 日

 



【研究成果の概要】

 

背景
 

シロアリは家屋に甚大な被害を与える害虫として有名ですが,一方で学術的には非常に興味深い生物でもあります。例えば,シロアリは王・女王アリや働きアリ,兵隊アリなどの異なる階級(カースト)の個体が集合して生活し,他の生物ではあまり見られないようなとても複雑な「社会」を形成します。

また,枯死植物(枯れ木,枯れ草など)を食べる分解者として生態系において重要な役割を果たしたり,原生生物を腸内に住まわせて強固な共生関係を築いたり,数多くの興味深い特徴をもって
います。このように私たちの生活においても学術においても大きな存在感を持つシロアリですが,残念ながらこれまで,「それらがどのような遺伝子をもっているか」はほとんど分かっておらず,様々な研究を進めるうえで重要なこの基礎的な情報が欠けていました。
 

そこで今回,シロアリが発現している遺伝子を網羅的に取得して,その塩基配列を解読することを目的として研究を行いました。本研究で用いた種はオオシロアリ,ヤマトシロアリ,タカサゴシロアリの3種で,これらは全て日本産のシロアリですが,地理的分布や生態,体の形態,社会構造など様々な異なる特徴を持っています。

特徴の異なる複数のシロアリについて調べることで,シロアリ種間の共通点や相違点を調べることができ,さらに多くの知見を得ることができるようになります。



研究手法
 

まずは,3種のシロアリで,様々な階級の個体を採集することから始めました。異なる階級の個体は体の形態や行動だけでなく発現している遺伝子も異なっており,多くの種類の発現遺伝子を取得するには多くの階級の個体から発現遺伝子を抽出する必要があるからです。

本研究では,ほぼすべての
階級の個体を採集し,それらの発現遺伝子(具体的にはRNA)を抽出しました。次に,抽出した遺伝子に対して次世代DNA シーケンサー(大規模塩基配列解読装置)と呼ばれる新技術を用いることで,これまでほぼ不可能であった網羅的な塩基配列の解読に成功しました。

その結果得られた大規模な塩基配列情報を大型計算機で解析しました。


研究成果
 

オオシロアリ,ヤマトシロアリ,タカサゴシロアリで,それぞれ120 万以上の遺伝子断片の塩基配列解読に成功しました。得られた塩基配列情報を基礎生物学研究所の大型計算機で解析すると,これまでに知られていない遺伝子が数多く発見されました。

これらの未知遺伝子について,遺伝子機能を
調べるなど今後のさらなる研究を行うことで,シロアリの興味深い特徴との関連が明らかになることが期待されます。

また,塩基配列情報をもとに3種のシロアリでDNA メチル化が生じているかを調べました。遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)でできていますが,DNA メチル化とはDNA を構成する塩基にメチル基が付加されることで,それにより遺伝子の発現量が調節されると考えられています。

本研究ではまず,
このDNA メチル化反応に関わる遺伝子をシロアリが持っているかを調べました。その結果,3種のシロアリでdnmt1(DNA メチルトランスフェラーゼ1)を持っていることが分かりました。

また,DNA メ
チル化が生じている遺伝子の特徴の1つとして,DNA 塩基のシトシンとグアニンの2塩基が並ぶ配列(‘CpG’と呼ばれています)の出現頻度が低いことが知られていますが,今回取得したシロアリの遺伝子配列中にはこれらの配列は非常に低い頻度でしか出現しませんでした。

dnmt1 が存在すること,CpG 頻度が非常に低いことから,3種のシロアリでDNA メチル化が生じている可能性が強く示唆され,DNA メチル化と社会性の関連について今後の研究展開が期待されます。



今後への期待
 

本研究では,これまでほとんど明らかになっていなかったシロアリの遺伝子の塩基配列を解読することができました。

この塩基配列情報は,シロアリの遺伝学だけでなく,シロアリの進化や知られざ
る生態を明らかにすることなどに大いに役立ちます。

また,シロアリの遺伝子の特徴を調べて上手に
利用することで,シロアリの防除や産業利用にも応用できる可能性があります。

このように本研究で
得られた塩基配列情報は様々な研究に利用可能であり,シロアリの基礎研究と応用研究の発展に大きく貢献することが期待できます。

 



【お問い合わせ先】
 

所属・職・氏名
北海道大学大学院地球環境科学研究院・准教授 三浦 徹(みうら とおる)


TEL: 011-706-4524
FAX :011-706-4524
E-mail: miu@ees.hokudai.ac.jp


ホームページ
http://noah.ees.hokudai.ac.jp/~miu/miura_lab_japanese.html




【参考図】
 

シロアリ3種


図1.

今回の解析に用いられた3種の日本産シロアリ。上から,オオシロアリHodotermopsis sjostedti
,ヤマトシロアリReticulitermes speratus ,タカサゴシロアリNasutitermes takasagoensis。得られた遺伝子情報から,シロアリの社会性を担う仕組みが明らかになることが期待される。


 

CpG/OE


図2

シロアリの遺伝子のCpG(シトシンとグアニンの2塩基が並ぶ配列)の出現頻度の観察値と期待値の比(CpG O/E)の度数分布表。いずれのシロアリでも,ほとんどの遺伝子のCpG O/E
の値は1より小さい。DNA メチル化が生じた遺伝子ではCpG O/E の値は1より小さくなる傾向にあるため,シロアリの遺伝子の多くにはDNA メチル化が生じていたと考えられる。また,CpGO/E の頻度分布を統計学的に解析すると,青線で示した2つの確率分布の混合分布が観察値をよく説明できることが分かる。このこともDNA メチル化が生じていたことを示唆している。

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